保団連女性医師・歯科医師開業医会員アンケートまとめ
産前休暇ゼロ 女性開業医の3割
1.調査の目的

 厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査(2014年)では、2012年の前回調査に対する増減が、医科では男性1.8%増に対し、女性6.7%増、歯科では男性0.3%増、女性4.9%増と、女性の割合は年々増加しており、これからの医療を支える上で女性医師・歯科医師の役割は非常に重要になっている。

 保団連女性部では、女性医師の労働環境改善が、女性医師のためだけでなく男性医師の労働環境を改善すると共に、安全な医療の提供につながり、ひいては医師以外のすべての働く女性の労働環境改善にもつながると考え、提言や国への要請などを行ってきた。

 この間、育休・産休、院内保育所などの環境整備は、勤務医については一定の改善が見られたが、女性開業医については進んでいない。

 そこで、女性医科・歯科開業医会員の働く環境や、悩み、要望、問題意識などの実態を調査し、働く環境の改善や、今後の協会活動につなげるため、アンケートを実施した。

2.調査方法

 ①調査対象:各保険医協会・医会の開業女性会員
 ②対象者数:女性会員数7463(医科4721、歯科2742)名
  ※2011年調査→3割2239名
 ③選出方法:各協会・医会ごとに対象会員の3割を無作為抽出(一部は全女性会員に発送)
 ④調査期間:2015年7月~9月(発送時期は協会による)
※締切は9月30日としたが、2016年2月までに回収された調査票を有効として集計した。

3.回収状況

①発送数:2956件(46協会・医会)
②回収数:644件(46協会・医会)/回収率:21.8%
うち有効回答数:644件/有効回答率:100.0%

4.集計

問2 診療科
回答者の診療科は、
医科417人(64.8%)、
歯科224人(34.8%)。


 医科の主な診療科は、内科が32.9%を占め、次いで眼科14.1%、皮膚科10.8%、小児科10.1%、産婦人科・婦人科7.4%、耳鼻咽喉科7.0%となり、6科で全体の8割を占める。

 この傾向は厚労省の「2014年医師・歯科医師・薬剤師調査」における女性医師の診療科でも概ね同じである。同調査に比べ、内科の割合がやや多く、麻酔科・放射線科・臨床研修医などが少ないのは開業医を対象としたアンケートであるためとみられる。

問3 現在の年齢および開業医になった年齢
現在の年齢は平均54.9歳(標準偏差10.2)。50歳代が4割で最も多く、45歳未満は16.1%。
 開業医になった年齢は「35~39歳」が178件(27.6%)で最も多く、次いで「40~44歳」142件(22.0%)、「30~34歳」128件(19.9%)。医科歯科別に見ると、医科では「35~39歳」が122件(29.8%)で最も多く、「40~44歳」109件(26.6%)、「45~49歳」64件(15.6%)、「30~34歳」54件(13.2%)の順。歯科では「30~34歳」74件(33.9%)が最多で、「35~39歳」54件(24.8%)、「25~29歳」33件(15.1%)、「40~44歳」32件(14.7%)の順に多く、歯科の方が開業年齢が低い傾向がみられた。


 医科歯科とも開業年齢のピークが出産年齢と重なり、自由記述では、「開業してしまうと、出産・育児が難しくなった」(歯科、37歳)、「開業医になってからの出産は経営リスクが高いと考え、2人出産してからの開業になった」(内科、40歳)、「子どもがなかなかできず、半ば諦めて開業した後、妊娠した。子どもが早くにできていたら勤務医をしていたと思う」(歯科、49歳)と、開業と出産の時期に悩む女性医師・歯科医師の様子が分かる。

問4 専門医・認定医の取得の有無と、今後の予定
専門医・認定医は64.3%(医科83.5%、歯科23.2%)が取得しており、取得していない人のうち1割は今後取得の予定が「あり」または「条件次第」と回答している。
 自由記述では、「25歳くらいで医師になり、専門医取得が可能な年数に達するころは、ちょうど出産適齢期と重なる」(小児科、45歳)、「家族や親類の支援がなくても安心して働き続けられる環境整備が大切。保育施設も、休日・延長・病児保育などの対応が必要で、『子供が熱を出したから休みます』では責任ある職種、役職にはつけません」(内科、73歳)、「短時間のパートで働いて、家族の面倒をみて、論文を書くことなど無理。男性も女性も短時間で働けて生活ができ、スキルアップできるシステムを希望します」(整形外科、52歳)など、キャリア形成する上でも負担が大きいことが分かる。

問5 週平均の診療日数
 週平均の診療日数は5~6日が9割を占める。

問6 1日平均診療(標榜)時間
 1日の平均診療時間は4~8時間が71.5%。8時間以上も26.1%(医科27.1%、歯科24.2%)に上る。

問7、問8 関心事と悩み
 関心事(複数回答)は、「診療」72.8%、「家族」56.4%、「自身の健康」55.9%、「医院経営」49.4%の順に多かった。


 一方、悩み(同)は「医院経営」が最も多く39.3%、次いで「スタッフ」34.3%、「家族」30.1%、「自身の健康」26.7%となった。


 年齢別に見ると、すべての年代を通して「診療」への関心が高く、30代、40代では「医院経営」や「家族」が続き、半数以上が「仕事と家庭の両立」に関心を持っている。50代以上では「医院経営」や「仕事と家庭の両立」の割合が低くなり、「自身の健康」や「趣味」への関心が高くなった。
 悩みについては、30代は「仕事と家庭の両立」が18件(50.0%)で最も多く、支援が必要なことが分かる。40代以上では「医院経営」や「スタッフ」、「自身の健康」などの割合が高くなった。
 子どもの有無で見ると、子ども「有」は、「無」に比べて関心・悩みとも「家族」「仕事と家庭の両立」が7~25ポイント高く、「無」は「医院経営」「スタッフ」の割合が8~12ポイント高かった。

問9 リフレッシュ方法は
 「ある」が83.5%で、読書や映画、スポーツ、旅行などが挙げられた。「ない」は14.4%。


問10 協会・医会の行事や保団連活動について
 協会・医会の行事や保団連活動で、知っている、または参加したことがあるもの(複数回答)は、「協会・医会主催の学習会・講演会」426件(66.1%)、「同新点数検討会」241件(37.4%)と、全回答者の4割~7割近くが認知・参加しているのに対し、全国保険医新聞に連載している「women’s eye」は80件(12.4%)、保団連女性部の学習交流会は72件(11.2%)と少なかった。
 医科・歯科別に見ると、歯科は新点数検討会や学習交流会の認知・参加度が高かったが、「Women’s eye」の認知・参加件数は4件に留まった。


問11 家族について
 配偶者は「有」64.0%で、うち配偶者の職業は「医師」45.1%、「歯科医師」11.9%と、合わせて半数以上を占め、医科では173件、歯科では47件が同業者だった。


 子どもの人数は「2人」194件(30.1%)、「1人」150件(23.3%)、「2人」110件(17.1%)、「3人」105件(16.3%)の順(n=644、無回答63件)。医科・歯科別に見ると、医科(n=417)では「2人」148件(35.5%)、「1人」93件
(22.3%)、「3人」76件(18.2%)の順。歯科(n=224)は「1人」57件(25.4%)、「0人」(25.0%)、「2人」44件「19.6%)の順で、医科の方が子供の数が多い傾向が見られた。45歳未満では、医科は「2人」14件(31.8%)、「1人」13件(29.5%)、「0人」7件(15.9%)の順で、「3人」も5件あった。同歯科は「1人」16件(26.7%)、「0人」20件(33.3%)、「1人」16件(26.7%)の順だった。

 介護を要する家族は「有」が145件(22.5%)だった。

問12 産前・産後休暇と診療体制
 開業後1人目の産前休暇は「0日」が31件(25.2%)に上り、「1~10日」の31件(25.2%)と合わせて半数を占める。2人目、3人目では「0日」が最も多く、1~3人目を合わせて57件(27.1%)と、約3割が出産直前まで診療していたことになる。


 産後休暇は、1人目は「21~30日」47件(38.2%)が最も多く、「0日」6件(4.9%)を含め30日以内が64.3%に上る。2人目、3人目も同様の傾向が見られた。


 年齢別に見ると、35歳~44歳の1人目産前休暇は「0日」5件(医科3、歯科2)、「1~10日」が最多の9件(医科、歯科7)。


 同産後休暇は「21~30日」11件(医科5、歯科6)が最多となり、女性開業医は今なお苛酷な状況に置かれていることが分かる。


 総件数で見ると、産前休暇は医科・歯科とも10日以下が半数以上に上り、医科では「0日」が最も多く28件(27.5%)。歯科は1~10日が30件(27.8%)で最多、「0日」も29件(26.9%)と並び、医科歯科とも厳しい状況が伺われる。産後休暇は「21~30日」が最も多く、医科41件(40.2%)、歯科39件(36.1%)。「0日」も計9件(医科5、歯科4)あった。
 労働基準法では、母体保護の観点から産後8週間は就業できないことになっており、産後6週間は本人が希望しても「就業させてはならない」と定められている。厚労省依託調査「平成27年度仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究」によると、産前・産後休業の取得率は「女性・正社員」では77.1%、「女性・非正社員」は27.5%だった。また厚生労働省の平成26年度雇用均等基本調査では、在職中に出産した女性のうち86.6%が育児休業を取得しており、少なくとも産後8週間以上休んでいることになる。
 これに対し、医科77件(75.5%)、歯科72件(66.7%)、計149件(71.0%)が産後休暇30日以下だった。
 自由記述では、「現在妊娠3ヵ月ですが、代診が見つからず大変な思いをしています」(歯科、41歳)、「産前産後の休みが少なすぎたため体調を崩した。両親も近くにおらず、代診を頼むのも金額が高いので、2人目が欲しいけど厳しいと思う」(内科、36歳)、「開業してすぐに妊娠が判明したため休めず、陣痛がくるまで診療した。経済的な理由もあり、産後子供をベビーシッターに預けてすぐに仕事を再開したため、体もつらかった。自営で公的な支援も受けられなかった」(内科、39歳)など、厳しい状況がつづられた。
 産前・産後休暇中の診療体制は、開業後1~3人目とも6~7割が代診で対応し、総件数では「代診」が医科75件(72.8%)、歯科61件(59.2%)、「休診」は医科19件(18.4%)、歯科28件(27.2%)だった。


 出産時に勤務医だった場合、非常勤やパートなどに勤務形態を変更したほか、中には「解雇された」(歯科、50歳)、「退職した」(小児科、50歳)、「復職をあきらめた」(小児科、49歳)というケースもあった。

問13 子育て中の仕事
 子育ての際の仕事は、314件(61.7%)が「子育て前と同様に続けた(続ける)」と回答し、「縮小」が83件(16.3%)、休業も30件(5.9%)あった。
 子育て支援の有無で見ると、子育て支援があった(ある)場合は「縮小」18.7%、「休業」6.3%にとどまっているのに対し、なかった(ない)場合は「縮小」40.9%、「休業」27.3%に上る。


問14 子育て支援
子育てへの支援は451件(70.0%)が「あった(ある)」と回答。「なかった(ない)」と回答した人のうち、半数の10件は仕事を「縮小」、7件が「休業」と答えている。

 支援者(複数回答)は親族が342件(75.8%)、次いで配偶者189件(41.9%)、民間サービス165件(36.6%)、「公的サービス」97件(21.5%)となっており、保育園などの公的保育サービスが女性開業医のニーズに応えるものになっていないことが分かる。

 支援者が「配偶者」と回答した人のうち、配偶者の職業が「医師」「歯科医師」は87件(52.4%)、その他は79件(47.6%)で、大きな差はなかった。

 自由記述では、「自営ということで公的支援を受けられなかった」(内科、39歳)、「(公的)保育園へなかなか入れず、環境の悪い保育園に預けざるを得ない状況が不安で、子供にわびる毎日だった」(歯科、52歳)、「労働者側には産休等の様々な優遇があるのに、女性経営者には配慮がない」(歯科、56歳)など、開業医であるために公的支援を受けられない苦労がつづられた。必要な支援としては、病児・休日・延長保育の充実や、院内保育、代診等の仕組みと経済的支援を求める声が寄せられた。

 また、男性や社会の意識改革、家庭内での役割分担の必要性を訴える声も多かった。「『女性が家事・育児・介護の主役である』という前提の下で議論しても、女性は苦悩から逃れられない」(耳鼻咽喉科、59歳)、「仕事の内容は男女同等になっていても、家事育児は女性のものという考え方は根強いために、女性が仕事と家庭で苦しむ場面が多いのではないか」(心療内科・54歳)、「男性医師も家事・育児に対して手伝いではなく当事者としてかかわることなしには女性医師が医師としてのキャリアを積むのは不可能だと思う」(内科・53歳・子ども2人)など、女性だけでなく男性も含めた働き方の改善が求められている。

問15 介護中の仕事
 介護の際の仕事は「介護前と同様に続けた(続ける)」69.4%、「縮小した(する)」18.8%、「休業した(する)」5件(0.9%)だった。

問16 介護への支援
 介護への支援は「あった(ある)」66.5%、「なかった(ない)」7.2%。支援者は「親族」「民間サービス」がともに30.5%で6割を占め、次いで「公的サービス」20.3%、「配偶者」12.2%となった。

 

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