第15回七夕トーク 藤瀬先生から届いた、トンガの風

 トンガにJICAから派遣されて、歯科協力を2年間体験された、歯科医師の藤瀬多佳子先生の講演を聞くことができました。
 藤瀬先生のトンガでの歯科医師生活は、日本のそれとは、ずいぶん異なる日常でした。

 さて、なぜ、トンガ? 先生にお話しをお聞きするまでは、全員まったく想像もつきません。しかも、藤瀬先生が派遣されたのはトンガの僻地のババウ島と言うではありませんか。そんな想像もできないところに、二つ返事で、どれだけの女性歯科医師が行くことができるんでしょう。文明生活に侵された私なんて、聞いてるだけで、ひるんでしまいます。

 とめどなく楽しそうに、トンガでの経験を話される藤瀬先生を、会場の参加者一同は、ため息をつきながら見つめておりました。パワフルな先生とはいえ、こんな風に、その才能とパワーを、小さな美しい島の人々のために開花させるとは、その日、たくさん参加くださった九大の同級生、後輩、誰一人予想していなかったんじゃないかと思います。

 トンガでは、小学生の虫歯の罹患率は、95パーセントだそうです。スライドに映し出されるトンガ国民の口の中は、まず、日本人の口の中ではありえな~い、と思うほど、焼け野原状態です。そもそも、歯ブラシ習慣がない? 歯医者が足りない。ないないづくしの歯科環境です。そんな環境の現地で、藤瀬先生に求められたのは、抜歯でした。日本なら保存できる歯でも、ひたすら抜歯です。歯科医としてジレンマをかかえながら、ニーズを満たしていた藤瀬先生は、とうとう行動し始めました。ある時から保存治療を試みることにしたのです。しかし、予算も少なく、治療器具は、すべて島外からの輸送に頼るトンガの僻地では、その試みは、すぐに、材料がつきてしまうという現実にはばまれてしまいました。

悩んだ藤瀬先生がいきついた結論は、「予防」!

 学校が整っているというトンガの良いところに目をつけて、そこに、「予防」を浸透させる。マイナスを嘆くより、プラスを喜ぶ藤瀬先生の当然ともいえるアイデアでした。
 先生の2年の滞在の大きな目標ができた先生。きらきらした彼女の目が見えるようです。しかし、いざ小学校を対象に予防活動とがんばってみたものの、現地の先生は仕事がふえると、すぐに協力体制に入れなかったそうです。でも、そんなことであきらめないのが藤瀬スタイル。
 たまたま、疫学調査をしようとしていたWHOをまきこんで、検診活動にこぎつけました。その結果、トンガの歯科の惨状を数値化して現地の人たちにプレゼンすることができました。
 ターゲットを子供にしぼり、午前中は診療所で治療にあたり、午後からは、ババウ本島の21校をめぐり、歯磨きとフッ素洗口指導を根気よく続けました。
 一日平均600人の子供たちをかえていけば、きっと大人までかわっていく。その信念で、地道に地道に継続した結果、帰国する2年後には、子供たちの口の中は、劇的に改善して、めんどくさがっていた先生方にも、すっかりやるのが当然のようになってしまったそうです。
 そして、プロジェクトは、10年後の今まで引き継がれ、トンガのスタッフに受け継がれている、と聞いて、会場の皆さんに溜息・・・感動がよぎります。

 さて、トンガは、ヨットマンのあこがれの寄港地だそうです。おまけに、くじらだって、トンガに寄るのだとか。数多くのヨットマンと交流しながら、「海とは、人を隔てるものではなく、人が入ってくるところなのだ。」と教えられたそうです。世界中からやってくるヨットマン、はたまた各地から集まってくるボランティアスタッフと気軽に交流を重ねる藤瀬先生。彼女のトンガは、僻地トンガではなく、なんてオープンでインターナショナルな場所なのでしょう。
 先生の英語が流ちょうなのも、英語を伝えるための道具としてしたがえているからなのでしょう。
 「日本人は四季もあるし、多様性を受け入れることができる国民だ。しかも、日本人は年齢不詳で若く見える。顔は丸くて威圧感がなく、世界中で好かれる。」
 また、「私は、トンガでは、日本人の代表。私イコール日本人。日本で自分の名刺代わりになっていた勤め先も、資格も何もかも、ゼロ出発になる海外。じゃあ、そこで私は何ができるか、まずそこからです。」そう言われていたのが印象的でした。
 加えて、「歯科医という技術は、世界共通。歯が痛いとうずくまっている人は世界共通」。
 普段そういう見方をするチャンスに乏しい会場の私たちは、自分のレンズの焦点距離を、思わず変えられたような気持ちになります。

 たくさんの参加者の大部分は、藤瀬ファンでした。同期生の先生方の出席も多数で、藤瀬先生が、周りの人に愛され続ける幸せな方でもあるとわかります。
 県内3つの歯学部からそれぞれ参加してくださった歯科学生の方々も、歯科医の前途に、また、ひとつ、素敵な道を見出してくださったようでした。

 日々忙しく、気苦労の多い女性歯科医師たちに、藤瀬先生から届いた、トンガの風は、まるで神経質なワーカホリックな毎日に吹いてきた一陣の風のようでした。

(浦川幸世・記)
2016.7.24

 第15回七夕トークのご案内
―女性歯学生と女性歯科医師“トーク&交流のつどい”―
Think globally,Act locally~歯科医師、それは世界に笑顔を広げる し・ご・と~

2016.7.24
小児歯科専門医
九州大学歯学部
福岡歯科衛生専門学校非常勤講師
講師
藤瀬多佳子さん

プロフィール歯科医(小児歯科専門医)
1989年九州大学卒業後、大学院では「咀嚼と肥満」の研究を行い学位取得。医員・助手として大学病院に勤務した12年間に、当時九大歯学部がJICAから委託されていた歯科研修コースで途上国を含む世界各国の研修員と出会い、自ら歯科医師として海外へ赴くことに関心を抱く。JICAボランティアとして南太平洋トンガ王国で長期間(2年)、帰国後は、勤務医をしながらカンボジア、ベトナム、スーダンで、NGOの一員として短期間の医療活動した経験を持つ。

と き:2016年7月24日(日)午後1時~午後5時
ところ:天神テルラ4Fテルラホール
     福岡市中央区渡辺通り5-25-18天神テルラ4F
     TEL:092-732-4441
参加費:会費3,000円 軽食とお茶を用意しています。
    ※歯学生は参加費無料
七夕トークのチラシは こちらからLinkIcon

♪ 藤瀬多佳子さんからのメッセージ ♪
 エジプトの古代ファラオの時代から現代に至るまで、歯の健康観は古今東西老若男女問わず共通です。「歯医者が日頃のぞいているお口の中から世界を見たい」とありのままの自分と「歯科医師」という肩書だけを携えて、JICAボランティアとして南太平洋の小さな島国トンガ王国に赴いたのは今から9年前のことでした。

 キリスト教の親日的な国でした。大人は出稼ぎに国外に出るので、人口の4分の1は小学生以下の子供たち。約2500名の小学生全員の歯科検診を行ったところ、う蝕罹患率95%でした。
 島には病院が1つあるだけで、材料不足に人材不足。治療はとても追いつかない。そこで立ち上げたのが学校巡回歯科保健プログラムでした。
 現地のスタッフによって現在も継続しているそのプログラムは、確実に成果を出しています。

 一昨年は2度にわたってイスラム教の国、アフリカ・スーダンを訪れました。NGOロシナンテスとハルツーム大学歯学部と協同で約1500名の子供たちの歯科検診と健康教育を行った結果、う蝕は思ったより少なかったものの5人に一人、歯肉炎が認められました。ハルツーム大学歯学部の90%は女学生で、大変お世話になりました。
 日曜日は安息日で教会に行って食べて寝てゆっくり過ごすトンガ人、一方、一日5回のお祈りの前には必ず口をすすいで体を清めるスーダン人。
 口の中には、その国の文化、暮らしが反映されていることを知りました。

 国際協力は異文化理解から始まります。歯科医師として医療ボランティアをしたカンボジアやベトナムでの話も交えながら、私の体験を参加者の皆様とシェアさせていただいて、楽しいひと時が送れたら幸いかと存じます。

第10回料理教室 ホームパーティーで作ろう

2016.6.19
  •  6月19日(日)、ふくおか女性歯科医師の会主催の第10回料理教室が梅雨の晴れ間の日曜日に開催されました。今回は、下は2歳から、老若男女の少数先鋭?が同じ釜の飯よろしく同じ調理台に居合わせたご縁でチームとなり、力を合わせて腕を振るいました。

  • 徳永睦子先生から、「ホームパーティーに持ち寄りたくなる一品料理」と銘打った5品、お手軽パエリア、カルシウムたっぷりのわかさぎのチーズフライ、グリルハーブチキン、エスニックサラダ、マンゴープリンを教えていただきました。料理はスパイスといいますが、文字通りのスパイスとして、旬のミントや、パクチー、サフラン、先生特製の魔法のミックスハーブを多用して、減塩でも、奥深い味わいの料理の数々が、先生の華麗な手さばきと、軽妙なトークの中、次々完成していくのを固唾を飲んで見守ること40分。こちらはうっとり、やり遂げた感に浸るばかりでしたが、当然ながら、実践もあり。あれ、どうするんだっけ?教わったはずなのに、もう忘れてる。でも大丈夫。先生方の素晴らしいフォローで、信じられない出来栄えとなりました。

  • 先生から教わった、手抜きでありながら、ひと手間かけるパラドックスな技の数々。秘訣は愛情というスパイスでした。心がけておられるのは、食べ物は素性がわかるもので作るということ。市販のものは油や塩分が多いので、手作りする。市販のものも例えばドレッシングなら、油分をとりすぎないですむので、最初に油を捨てて使う。味付けは薄めにして食べるときに足す。ハーブで味わいを増す。今回の料理では香りを出すためにサフランは炙る、生クリームの代わりにアイスクリームを使う、・・・などなど。

  •  「食べる」は人が生きるということに大きく関わっており、歯科医としてはいかに咬むかは、いつも心を砕いていることです。さて、咬む「もの」、咬む「こと」についてはどうでしょう。今更ながら、からだは食べたものでできている、ということ、食べて、生きるということを考えさせられた一日でした。
(松野聡子・記)

第10回料理教室
ホームパーティーに持ち寄りたくなる一品料理

フードプロデューサー
料理研究家、世界緑茶協会顧問
徳永睦子さん
☆ プロフィール ☆
◇1971年より15年間、鹿児島MBC放送で専属料理講師を勤めた後、九州生協食品カタログの料理製作・監修
◇1987年より8年間KBC九州朝日放送の料理番組を担当し、家庭料理の味の伝承・食育の大切さを伝えてきた
◇1990年12月、「食」全体をテーマとした企画を手がけることを目的に、“食のコンサルティングファーム㈲フーディアムトクナガ”を設立
 

と き:2016年6月19日(日)午前11時~午後2時
ところ:西部ガスショールームヒナタ福岡
     福岡市博多区博多駅東2-7-27「TERASO(テラソ)-II」
     「八仙閣」の隣のビル2階です。
     TEL092-411-0500
材料費・会費:3,000円
定員:18名
※エプロン・バンダナなどはご用意ください。
料理教室のチラシは こちらからLinkIcon
お申込みは、電話(092-473-5646)また メールLinkIcon
※お申込み締め切りは6月13日

 今回は、「ホームパーティーに持ち寄りたくなる一品料理」がテーマです。メニューは、パエリアやグリルハーブチキンなど、ホームパーティーで作りたい品々。招く側は、おもてなしの心をこめて。招かれる側は、感謝の気持ちをこめて。お料理のレパートリーをふやしながら、お付き合いの輪を広げましょう