岡﨑誠

20081022-1.jpg岡﨑 誠(おかざき まこと)
福岡県歯科保険医協会事務局長
1951年福岡県生まれ。
1984年福岡県歯科保険医協会入局。福岡県社会保障推進協議会・事務局次長。
NPO法人「患者の権利オンブズマン」の発足に携わり、現在正会員

保険医の権利を守る弁護士帯同

保険医の権利を守る弁護士同行開始から2年、九州全体へ広がり

・福岡県歯科保険医協会では、2008年に個別指導時の弁護i士帯同を初めて実施した。
・他県でみられるように、以前から福岡県でも行政の横暴な個別指導時の対応等は問題になっていた。
・2007年秋、東京の歯科保険医自殺事件を発端に、保険医の人権を守る視点から、個別指導時における弁護士帯同について積極的に検討し決定したものである。
・2010年4月現在、個別指導等への弁護士帯同件数は2年間で11件目となり、実績を重ねてきている。
・指導の現場に法の専門家が同席するようになり、医師・歯科医師に対する行政指導の問題点も明らかになってきた。

人権無視の発言で診療意欲の萎縮強いられる

 「個別指導」の言葉の響きは「悪魔の囁き」という人もいる。
 2年前の個別指導時に指導官から、「患者を食いものにしとらんか!」と侮辱的な言葉を浴びせられ、それがトラウマとなり1年間悩み続け、診療の手を止めざるを得なかった事例や、「歯科医師としてのプライドを傷つけられ、保険医としての人権は守られず、萎縮した診療に追い込まれ、歯科医師になったことさえ後悔した」と話す歯科医師もいる。
 福岡県では、6年ほど前「個別指導」時に、指導官の暴言に気分が悪くなり、救急車で運ばれた事例がある。それほどまでに、「個別指導」は恐怖感、そして歯科医としてのプライドまで傷つける「指導」と称しての糾弾の現場となっている。

二度と繰り返してはならない『保険医自殺事件』


2007年9月17日、東京の歯科保険医が自殺、歯科界を初め一般メディアでも取り上げられた。11月の当会理事会で、東京の歯科保険医自殺事件のようなことを二度と起こさせないとして、厚労大臣への抗議声明、福岡社会保険事務局(当時)へ「二度とこのようなことが起きないよう」要請・懇談申入れを行うと同時に、12月に「個別指導時の弁護士帯同」について弁護士メンバーとの相談を行った。

 ちょうど同時期に、京都府歯科保険医協会主催の山井和則衆議院議員(当時、民主党厚生労働委員会筆頭理事、現厚生労働省政務官)の仲介による「厚生労働省、指導;監査室との指導・監査の勉強会」(2007年12月20日)に当会からも参加し、厚三省から弁護士帯同容認の公式見解を確認することができた。
 このような中、年明けの1月に3人の弁護士、当会役員、個別指導を最近受けた歯科医師等で「弁護士帯同問題」での勉強会を開催した。

同行支援システム「弁護士登録」制を検討



勉強会では、まず個別指導の実体験を数人が報告。東京の事件や、トラウマとなった事例等、密室性、萎縮せざるを得ない実態や暴言がまだまだ横行していることなどが紹介された。これを受け、協会では「保険医の権利を守るため」に、

①「患者の権利オンブズマン」が実施している同行支援の形で「帯同」のシステム化を図ることにした。
②直前に一方的に指定される指導通知に対応すべく、対応できる弁護士5人程度の「登録制」とすることも決めた。
③代理人委任状の作成や帯同希望者との事前の顔合わせなど指導当日に向けた段取りを決めると同時に、協会新聞での「広報」を開始した。

 指導から監査になり、最悪の場合は保険医登録・保険医療機関指定取り消しが5年間に及ぶなど、他の行政処分との比例性を欠くことが医療現場で横行してきた。まずはこれを正常な状態にしょうと、率直な意見交換を行った。
 この勉強会を行った時点で、ある弁護士から「帯同希望者が現れなければ、個別指導への同行支援システムづくりは取りやめにしましょうね」との発言があった。つまり、これまでの歯科保険医は行政に対して何も物を言わない、なすがまま、の存在に見えていたのだろう。
 最初の帯同事例は、社会保険事務局が行う個別指導の年次計画予定表にはない「個別指導」として呼ばれた会員からの相談だった。開業してからの「新規個別指導」も受けたことがなく、年末に集団的個別指導を受けて以降は、萎縮診療を強いられて悩んでいたという。
 社会保険事務局(当時)へ問い合わせたところ、今回の個別指導は「通報によるもの」との回答であったため、協会へ相談されたものだった。会員から「弁護士帯同」の申し出を受け、そのため緊急に「勉強会」を開催、弁護士との面談および相談を行った。
 弁護士からは帯同を実施するにあたって、

①指導の中身に立ち入ることはできないが、指導官(技官)の威圧的な態度や質問に困惑した場合は本人と相談し対応する
②その場で答えられない事柄については、後日「文書」で提出することも含め、様々な検討を行テーの2点を踏まえて、個別指導当日の約2時間半に渡る「帯同」を実施した。


 「個別指導」を終えて、歯科医師本人から、「今回の弁護士帯同によって逆に変に思われて攻撃されるのではないかという不安もあったが、思い切って臨むことができた」「高圧的な話し方ではなかった」「(本人と)指導官との歯科医同士としての技術的交流もできた」と感想をいただいた。
 その後この2年間に、すでに11件の弁護士帯同が実現した。いずれの会員も再度の「個別指導」時には弁護士帯同を希望している。
 現在常時5人の弁護士が「帯同弁護士」として登録し、どの弁護士が対応することとなっても良いように、双方での勉強会を実施してきた。

一人で悩まず保険医協会に相談を呼びかけ


当協会は、不正・不当を無罪放免してもらう目的で弁護i士帯同を実現したわけではない。
 密室の中での保険医の権利を守り、懇切丁寧な指導を実現するために、弁護士帯同は有効な対応策だと考えている。
 新規個別指導、個別指導・監査の通知が来たら、一人で悩まず1日も早く保険医協会に相談するよう呼びかけたい。違った視点から対策を考えることができる。
 そのために新規個別指導、個別指導の被指導者を対象に「保険の勉強会」を開催している。
 新規指導時の勉強会で感じることは、多くの医師が、とにかく「目を付けられたくない」「今はじっと我慢して乗り切ろう」といった萎縮診療ともとれる姿勢だった。患者のためを思って行った診療行為が、実際の請求に反映されていない事例や、「この請求は福岡県では通らないから……」といったあきらめの萎縮請求となっていた。

 他方、いわゆる「ベテラン歯科医師」の個別指導時の勉強会では、「長年この請求で通っていたから……」と、実際の算定要件を深く確認せずに行われた請求や、「他の人もこのくらいはやっているだろう」といった誤請求事例を目にすることなどがある。
 「保険医とはあくまで国に登録し、契約した内容のみで診療が認められています。診療報酬がほしければ 決められた内容・方法を守って請求してください」とは、とある厚生局の集団指導時における指導官の言葉だが、数年おきにころころと通知・通達一本で変わってしまう算定ルールに対応できにくくなっている。このような中で委縮診療の深刻化が進んでいる。
 こうした現状にあっても「いざとなったら誰かが助けてくれる」、という他力本願で対応しようとする保険医もまだまだ存在する。
 同じ診療行為を行っていても、改定のたびに診療報酬は目に見えて切り下げられ、医院経営は悪化しているのだという事実が、持参されるカルテから如実に読み取れる。

 「保険請求に習熟すること」は保険医としての当然の責務である。しかし、こうも頻繁に算定要件の変更がなされている状況で、「知らなかった」や「認識不足」までもが「不正・不当請求」とされるのであれば、なお一層、保険診療のルールの「周知徹底」は不可欠であろう。
 当然、周知徹底を図るのは、(私たち保険医だけではなく)厚生労働行政に課せられた義務そのものであることを強調したい。つまり、懇切丁寧な指導を尽くしてこそ、厚労省自らが作った難解な算定要件を保険医に周知する義務を果たすということである。

 この「保険の勉強会」を通して「弁護士帯同」を希望する被指導者が次々に現れている。被指導者にとって、弁護士を指導現場に帯同することは決して「目を付けられる」ことや「不利」に扱われることではない。
 前にも紹介したように、誰も助けてくれないし、技官に暴言を吐かれたくもない。まして、不利益な取り扱いの挙句、自殺に追い込まれたいなどとは誰も望んではいない。むしろ、自分は「保険医として」懇切丁寧に指導を受けたい、という正当な欲求の表れが「弁護士帯同を希望する」という形になっていると思っている。
 法令に精通した専門家に同席してもらうことで、人権に配慮したまっとうな行政指導を保険医に対して行わせることを当面の目的にしているのみである。裏を返せば、保険医に対しての行政指導がそうなっていないということである。

弁護士帯同から2年、九州全体へ広がり

 社会保険事務局から地方厚生局へ移管された昨年(2009年)は、保団連九州ブロックで情報開示の一括請求を行った。その結果、各県で個別指導の実施状況や、指定をされる患者リスト送付時期の地域差(数日前~前日)、指定される持参物にも有意な差異があった。
 2009年は九州ブロック事務局学習会(10月31日)で、「指導・監査と保険医の権利」をテーマに山本哲朗弁護士(指導・監査帯同弁護団)を招いて学習会を開催、その後、佐賀・長崎・熊本各協会で関与弁護士との勉強会が進められ、弁護士帯同の体制が整った。
 また、鹿児島・大分・沖縄でも準備がなされ、九州ブロック全体に広がり始めている。
 帯同した弁護士からの感想では、「当初、厚生局は個別指導時の弁護士帯同はおろか録音すら難色を示していた。弁護士帯同が実現してみると、私たち弁護士が指導の中身に立ち入ることはないが、行政庁(厚生局)はつとめて紳士的に指導を行っているようだった。だが同時に行政庁は個別指導の密室性を守り続けたいようにも感じられた。従来のまま、個別指導を行政手法の聖域にして保険医統制の手段に利用されることは、保険医個人にとってはもちろん、医療を受ける患者さんにとっても不幸なこと。被指導者個人を責め立てるような個別指導のあり方は、行政手続法や保険医の人権保護上もあってはならない。今後、個別指導の透明性向上や可視化を目指すべきでは」と話してくれた。

管理統制の道具から、法律遵守の当たり前の行政行為へ

 ぜひ、全国で個別指導時の弁護士帯同が当たり前となることと同時に、この活動を通じて、健康保険法・療養担当規則等を、行政の保険医に対する「管理統制の道具」から、真の「患者のための医療」実現の手段とし、「通知・通達至上」の厚生労働行政を、「法律を遵守」する当たり前の行政行為へ変え、指導大綱・監査要綱の抜本的な見直しに繋がることを念じている。

 全国の協会・医会で「弁護士帯同」を実現することが、性悪説に基づく犯罪捜査的な指導の横行を食い止め、指導医療機関選定の密室性、非公開性、情報の非対称性、恣意性、不透明な「基準」や「地域差」、密室性の高い指導の現場を変え、医療・歯科医療を「内面」から改善し、患者・国民の医療を受ける権利(療養する権利)を守ることができると確信している。

『月刊保団連』誌 2010年6月号 No.1035より拙稿



保険医の権利を守る第一歩  弁護士帯同、全国で実施の検討を

・近年、保険医の指導の現場で人権を無視した「個別指導」がまかり通っている。昨年東京都で起きた歯科保険医の自殺に焦点をあて、保険医の権利を守る手段としての指導の現場への弁護士帯同の重要性を述べた。

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2008年10月からの乳幼児医療費助成制度の問題点 福岡県の母子・障害者医療を元に戻そう!!

(北九州市議会第6委員会の意見陳述より 2008年10月21日(月) 10時~)
北九州市議会での意見陳情  2008/10/21 10時から第6委員会

 本日、意見陳情の場を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
私ども福岡県乳幼児医科歯科医療費助成拡大連絡会は、県内の乳幼児を持つお父さんお母さんをはじめ、学識経験者ならびに医療関係者からなる団体です。
約10年間、「住んでいるところで、子どもたちが受ける助成制度に差があってはならない」と考えて活動してきました。

 さて今年の2月、麻生知事が本年10月から就学前までの通院医療費助成の無料化を発表され、10月1日から実施をされました。
私ども連絡会では麻生知事が公約を守り助成拡大を実行されたことに、大変な朗報だと喜んでいました。

 ところが、今回の新しい制度では、1月あたり600円(上限)の窓口負担と、所得制限が設けられています。
主な変更点は、通院(外来)での助成年齢が3歳未満だったものが小学校就学前まで引き上げられたわけですが、自己負担では3歳未満が無料であることに変更ありませんが、3歳以上は初診料・往診料の自己負担相当額が、10月以降、通院(外来)では1医療機関に付き1月600円を上限に、入院は1日500円、7日間を限度とされました。その他、所得制限の新設や入院給付についても自己負担等が見直しと称して後退をしています。
子どもたちが受診するのは小児科だけではなく、皮膚科、眼科、歯科などと複数にまたがって受診することも珍しくはありません。
このような他科受診や、600円の自己負担と言っても、子どもは1家庭に1人とは限りませんし、兄弟で同時に受診した場合、また、喘息など長期受診の場合などは、現行の制度より負担が大きくなることもあります。
これでは十分な医療費助成制度の拡充とはいえません。
最近の子どもたちの病気には、小児ぜんそく、小児糖尿病など、長期の治療を要する病気も多くあります。健やかな子どもを育てるために、「いつでも、どこでも、医療費の心配なく」病院や診療所で医師・歯科医師に相談や治療を受けられる状態にすべきです。
私どもは、乳幼児医療費の窓口負担の完全無料化は、これからの地域を担う子どもたちが健やかに育つために、必要不可欠な施策だと思っています。

今回の福岡県の助成制度見直しをまとめますと、
①乳幼児医療費助成の通院の対象年齢を3歳未満から就学前まで拡大する。
②「母子家庭医療」に父子家庭を追加する。
③「障害者医療」に精神障害者(手帳1級所持者、通院のみ)を追加する。の3つです。
 ところが福岡県は、一方で、
④3歳以上の「通院」には月1医療機関600円以上の自己負担を導入、
⑤「入院」は、これまで初診料の自己負担のみから、月上限7日、1日500円の自己負担を導入し、これまでなかった所得制限も導入しました。
⑥「母子家庭医療」にも「通院」月1医療機関800円、「入院」月上限500円の自己負担を導入、
⑦後期高齢者医療に移行しない65歳以上の障害者からも、新たに重度障害者と同様に自己負担を導入しました。
 これらの見直しを実現するためと言われる財源確保の方策は、
乳幼児医療費助成に必要な10億円は、これまで約2万人の方が受けてきた「寡婦助成制度」の全面廃止によって12億円を充当し、父子家庭や精神障害者への助成拡大の費用3億5千万円は、これまで無料だった障害者医療の自己負担などの6億8千万円から充当するというものでした。
つまり、13億5千万円の財源確保のために、18億8千万円の福祉財源を奪った形となっています。
私たちは、社会的な弱者の福祉予算を総額として拡大するのではなく、互いに制度を競わせて分断するという今回の福祉後退策的「見直し」に残念な思いでおります。
他の制度との矛盾点で言いますと、障害を持った乳幼児の場合、乳幼児医療費助成制度が優先するため重度障害者医療での助成(1医療機関に付き1月500円を上限)を受けることができません。
0歳から3歳未満まで乳幼児医療費助成制度により自己負担金は無料となりますが、3歳以降500円を上限とする重度障害者医療での給付はされず、600円を上限とする乳幼児医療での給付となっています。

つきましては、本市より福岡県に対して、窓口負担と所得制限を無くすよう意見書を採択していただきたく、お願い申し上げる次第です。
加えまして、県の助成制度から所得制限が無くなるまでのあいだ、当面して北九州市でも、独自に乳幼児医療費の助成制度を設けていただきたく、お願い申し上げるものです。

なお、都道府県レベルでは、国の助成以外に独自の乳幼児医療費助成制度を持っている場合、国からの財政支援が縮小されるという「ペナルティ」のような財政措置がありますが、福岡県から各自治体へのそのような措置は一切なされないということを県の担当者から確認しています。

既に苅田町が10月から中学校就学前まで無料化、県南部の八女市でも10月から窓口負担完全無料化と、県の助成制度に加えて自治体独自の医療費助成を実施しています。
北九州市におかれましても、これまで地域住民の要望に応えるべく様々な住民サービスに力を入れてこられてきたことと存じます。
地域振興・子育て支援のため、是非とも乳幼児医療費の完全無料化実現にご協力していただきたく、お願い申し上げて、本日の意見陳情とさせていただきます。